近代の学会の始まりは，英国Royal Societyと言われています。このRoyalは，言うまでもなく王立を意味しますが，王立と冠したのは国王が既存の権威に対して保護を行うということを意味しているそうです。” Nullius in verba（科学は事実に基づく者で，権威には追従しない）”という標語で有名なこの学会は，学会の本来の姿を現しているものです。有機合成化学協会も，この近代科学学会の精神に基づき我が国の有機合成化学の発展に大きく寄与して参りました。しかし学協会の運営は，最近どこでも芳しくなく順調とは言えません。純粋な学会の目指すもの以外の事で問題を抱え，Nullius in verbaと超然としていることが難しくなっています。これは運営形態に問題があるというよりも，学問の多様化と情報過多な社会で学会の存在意義そのものが大きく変化しているのではないかと思います。有機合成化学という絞り込んだ分野を対象とする学会でも例外ではありません。そのような中で，大学・企業から有機合成化学の文化を関西独自の形態で懸命に発信しているのが有機合成協会関西支部です。文化を維持するのは並大抵の努力では難しくなって参りました。皆様のご協力の下，若い人たちにそして社会に向けて関西支部の有機合成化学を発信したいと思います。

平成27年度有機合成化学協会・関西支部長
松原　誠二郎