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支部長挨拶
有機合成化学は、医薬品に代表される生理活性物質から電子材料に代表される機能性有機材料に至る新しい分子を、環境に適合したサステイナブルな方法で作るための科学・技術として、現代社会を支える重要な役割を果たしています。19世紀中頃にWilliam
Perkinが世界最初の合成染料であるモーブ(mauve)を合成しましたが、そこに有機合成化学がもつ全ての側面を見る事ができます。Perkinが当時強く求められていたマラリヤの治療薬であるキニーネを石炭産業の廃棄物であったコールタールから合成しようと思ったこと、キニーネの合成には至らなかったが偶然にも合成染料であるモーブの合成に成功しそれを産業化したこと、モーブは染料としては成功しなかったがPaul
Ehrlichが結核菌の染色にモーブを用いたことをきっかけとしてやがてスピロヘータに選択的な親和性をもつ色素を発見し化学療法学が生まれたことなどです。これらはよく知られていることではありますが、現在の化学工業や医薬品産業のルーツがここにあることは言うに及ばず、それらが互いに関係しあっていることや「大逆転」が起こっていることに、今更ながら強い感銘を受けます。 2012年度有機合成化学協会・関西支部長 |